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色々なその先を予測しています。今のところ ロトの予測 と 素人小説 が記事の中心になっています。 come on the scene Mar.2007

壁際にて
砂と石ころ以外には何も無い
大地に塞がる壁際にて


一番目にそこへ行き着いた男は、壁の上の見張り塔に向かい、名声を得る喜びを説いた。自分がいかに人々に慕われ、世間で言うところの聖者として有名であるかを。
でも壁に埋め込まれた石の扉は動かなかった。
男は、砂と石ころ続きの大地へと、再び戻って行った。

二番目にそこへ行き着いた男は、壁の上の見張り塔に向かい、女との情愛を説き始めた。
でも壁に埋め込まれた石の扉は動かなかった。
男は諦めずに続けた。これまでに何人の女と肉体関係を結んだかを自慢げに話し、その女達の体から性格までの一部始終を話し終えると、再び戻って行った。
砂と石ころ続きの大地へと。

三番目にそこへ行き着いた男は、少年の頃の私だった。
私には話す事など、何も無かった。
見張り塔を見上げ、話す必要も無かった。
何故なら身軽な私は、壁をよじ登ろうとしているのだから。

石組みの壁の隙間に指を引っ掛けながら五合目まで登った時、私は見張り塔を見上げてみた。
見張り番は、ライフルの銃口と一緒に私の事をじっと見つめていた。

何とか八合目まで達した時、見張り番は私に向かって言った。
「向こうには何も無い。これ以上登ると…子供でも容赦しない」
私は黒い筒先を恐れ、ゆっくりと降りて行った。

私は登る場所を変えてみたが、どこの見張り塔の番人も同じような事を言った。
「向こうには何も無い」

なら、どうして壁を作って大地を遮る? 何かがあるから遮断するんだろう?
疑問は尽きない…痛む指先に自問自答しながらも、ライフルの銃口には逆らえなかった。

これからどうする? 壁の下に穴を掘るか、見張り番のいない壁際を探し歩くか……
考えが行き詰まった時、ある疑問が生じた。
「そりゃ何かはあるだろう。でも向こう側には、命を賭けてここを越える程の価値があるのだろうか?」
だが戻ったところで何も無い。皆で尽きることなく欲望を求め、大地は枯れ果ててしまった。

諦めて…戻って緑の種を蒔くか? でも雨が降ってくれるとは限らない。どっちにしても神様の気まぐれが必要だ。
この地の全てを喰い尽くし、新たな喰い尽くすものを探し求めて亡者になった私達に、神様は振り向いてくれるだろうか。

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